トポロジカルデータアナリシス : 単体的複体
導入
不定期でトポロジカルデータアナリシス(TDA)に関する紹介をします。今回は、私たちが普段から何気なく慣れ親しんできた図形に関する話題です。ここでは、単体的複体をいう対象を考えます。
参考
このブログでは、数式を交えた説明は基本的にしません。きちんと理解したい方は、例えば
www.kyoritsu-pub.co.jp
があります。ただし、数学科の2〜3年生くらいの知識がある程度無いと読み進めるのは難しいです。
もう少し数学科以外に向けた本としては
www.seshop.com
があります。素粒子論をやりたい学生が、何故か(ほぼ)皆が申し合わせたように学部生あたりのときに読んでいる本です。微分積分学や線形代数を理解していれば読むことは可能です。
単体
ざっくり定義
単体的複体を考えるために、その構成要素である単体から考えています。
単体とは、点(0次元)や辺(1次元)、三角形(2次元)、四面体(3次元)といった図形を一般化したものです。これらをそれぞれ0次元三角形、1次元三角形、...と呼ぶことにします。これは、次元空間内の次元三角形という拡張ができます。この次元三角形を単体といいます。もう少し正確には、次元空間内に個の点を配置し、線形独立なベクトルを与え、その凸包を考える、という定式化をしますが、詳しくは参考書を参考にしていただけばと思います。
単体はより次元の低い単体を一部に含みます。それを「面」といいます。例えば、四面体(3単体)は三角形(2単体)*1や辺(1単体)、点(0単体)を一部に含んでいます。
単体的複体(複体)
ゆるゆる定義
単体的複体は、単体をあるルールによって集めた集合です。あるルールというのは、大雑把には以下の2つです。
- ある単体的複体に含まれる単体の面(部分集合的なもの)も単体的複体のメンバー
- 2つの単体が共通部分をもつときは、それぞれから見てきちんと面になっている部分で共有している
以下に、単体的複体を構成できる図形とそうでない例をあげます*2。
参考(http://infoshako.sk.tsukuba.ac.jp/~hachi/math/csc2/complex.html)
左側は三角形同士が点や辺の部分で貼り合わされていますが、右側ではそうではないものがあります。例えば、辺と点がくっついているもの(右側の図形のうち、左側)に着目します。その共通部分は点*3になっていますが、片方の三角形はそれが「面」(つまり部分集合)になっていません。つまり、2つ目の条件で、右側のようなはり合わせ方を禁止するようなルールを考えているわけです。
(注意)単体的複体は図形ではない
単体的複体は、単体をある「組み合わせ的な性質」で集めた集合であって、図形そのものではありません。そのため、ある特定の次元にある図形という具体的な対象を忘れ、集合の要素と「組み合わせ的性質」の2つだけで抽象化することが可能です。この組み合わせ的性質のみに着目したものを抽象単体複体をいいます。なんてまどろっこしいことを…と感じる方もいると思いますが、このような抽象化がデータをうまく図形に近似して特徴を取り出す際に役に立ちます。詳しい定義などは、参考書を見てください。
Next Step
この単体的複体は、データという点の集まりからどうやって情報を引き出すか、を考える際に使います。次回はどのような単体的複体がトポロジカルデータアナリシスで使われるかを簡単に紹介していきます。本当は、同値とかホモトピー同値とかいう「同じ」って何ですか、ってところを考えておいたほうがよいのですが、まずは解析するのに必要なキーワード的知識を紹介していくことにフォーカスしていこうと思っています。